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Keynote Guest Speakers [Japanese/日本語]

Mary Gordon  メリー・ゴードン
Roots of Empathy 創立者・CEO、アショカ・フェロー 2002年選出)

 

メリー・ゴードンは、世界的な教育界の賞を数々受賞した社会起業家として知られています。「Empathy(エンパシー)」というソフトスキルの重要性を説き、世界中に広めています。

生後間もない赤ちゃんを通してエンパシーを養うこの試みは、1996年初めてカナダ・トロントで実施されました。そして、このクラスは、数年のうちに、Roots of Empathy(ルーツオブエンパシー) という世界的な認知を受ける教育プログラムとなり、その後の活動の基礎となりました。お互いに相手を配慮しあい、平和で秩序ある社会をつくるために、子ども達のエンパシーを高めることが、このプログラムのミッションです。そして、このプログラムに参加した子供たちの中での暴力や攻撃的な行為、いじめが減少し、他の人を配慮する行為が増したとのエビデンスが三か国で見られました。

Roots of Empathyは、教室で行うプログラムです。赤ちゃんとその親が実際に教室を訪れ、そのカリキュラムのために編み出された訓練を受けたインストラクターの指導の下で始まります。インストラクターは先ず子どもたちに赤ちゃんが感じている気持ちを表す言葉を使えるように導きます。次に赤ちゃんが何を考え、感じているかを(言葉を使って)*議論します。この体験学習の目的は、赤ちゃんに直に接する経験から、子どもたちが自身の気持ちと、さらにクラスメートの気持ちも理解するようになることです。

*自分の感情を突き止め、言葉で表現する能力を「感情リテラシー」と呼びます。

「エンパシー」とは、認知的側面から捉えると、「(自分の見方にとらわれず)他者が、どう考え感じているかを推察する」ことです。複数の無作為化対照テストが行われましたが、 Roots of Empathy のクラスに参加した子供たちは「認知的エンパシー」のみならず、「情動的エンパシー」も豊かになり、感情リテラシー(emotional literacy)が深まったという結果が出ています。プログラムの中で感情リテラシーが育まれると、子どもたちは、自身の感情をより深く理解した上で、他者の感情も理解するようになります。つまり、エンパシーという能力を習得したのです。その結果、子どもたちが、いじめや意地悪で、他者を身体的、心理的そして感情的に傷つけ合わなくなるのです。

カリキュラムは子供たちの発育段階や興味に応じて考案されています。カリキュラムは9のテーマに分かれ、各テーマにつき3回のクラスを行います(「親子訪問」の前クラス、「親子訪問」(赤ちゃんと親の教室訪問)、「親子訪問」の後クラス)。9のテーマを遂行するために27回のクラスがあるわけです。また、各テーマでは全て幼稚園を含む初等学校の子供たちを年齢順に四つのグループに細分化しています。

Roots of Empathy のインストラクターは四日間の研修を受け、その後メンタリングのプロとしての心得を学びます。インストラクターの希望者はRoots of Empathyの理念を理解し、これを広めていく情熱があり、誰にでも心を開ける素養のある地域の有志からなっています。言うまでも無く、プログラムに参加している子供たちと良い関係を築ける人でなければなりません。インストラクターの経歴は、元教師、児童教育者、看護士、警官、消防士、等多彩です。

このプログラムはカナダ、アメリカ合衆国、ニュージーランド、アイルランド、英国、ウェールズ、北アイルランド、スコットランド、ノルウェー、ドイツ、スイス、オランダ、コスタリカ、韓国の多くの地方都市で実行されており、これまでに百万人以上の子供たちがこのクラスを受けてきました。

 
Bart Weetjens  バート・ウィートジェンス
(APOPO創立者、The Wellbeing Project 創立者、アショカ・フェロー 2006年選出)

 

ベルギー人のバート・ウィートジェンスは、 嗅覚察知の革新的研究により世界の地雷敷設国の1/3をそのダメージから救った功績で認知される著名な社会起業家です。彼は同時に、禅宗の僧侶でもあります。

アジア、アフリカ、ヨーロッパ、中東諸国、南米、中南米の84ヶ国には未だ5,500万個の地雷と不発弾が埋まっています。そして、毎年4万個の地雷が紛争地に新しく埋められています。その結果、現在でも日々40〜50人の人々が死んだり負傷したりしています。特に地雷による被害が最も多いアフリカ大陸の21ヶ国では、毎年12,000人もの人々が、死んだり、負傷したり、手や足や体の一部を失ったりしていました。それにも関わらずこの危険極まりない現実を解決する有効な方法はありませんでした。

それまで効果的だとして行われていた地雷の除去は、人手による除去と地雷探知犬との共同作業でした。犬は爆薬を嗅ぎ分け、広い地域を走査することが出来ますが、欧米で訓練を受けた探知犬は一匹2万ドルもする高額なものでした。その上、犬は熱帯の病気に罹りやすく、実際現地で仕事をやらせるには犬を調教する側の人達も高度なスキルも求められるため、そう簡単な方法ではありません。

バートはこう回想しています。「僕は9歳の誕生日に、両親に一匹のハムスターを買ってもらったんです。そして、ハムスターに夢中になり、10代になる頃には齧歯類(ねずみ、うさぎ、りす等)を繁殖させては、ペットショップに売るまでのエキスパートになっていたんですよ。丁度その頃、ベルギーではメディアが頻繁にアフリカにおける地雷の問題を取り上げていました。例えば1997年にはダイアナ妃がボスニアの地雷被害者を慰問している様子を大きく取り上げていました。その時、閃きが降りたんです。ねずみの嗅覚と、この喫緊の問題とを結びつけられないかと。」

アントワープ大学を卒業後、バートはアントワープの小さな実験室で、ねずみに地雷を探知させる訓練を始めました。「たった29歳の何の経験もない若造が無謀なわけのわからないことをやっていると、世間からは多くの非難を受けました。でも僕は、かまわず続けました。タンザニアの主要都市、ダルエスサラームから190km西のモロゴロにねずみの訓練場をつくる決断をしました。目的に直結した現地での訓練こそが、周囲の理解を得る手助けになると考えたからです。」とバートは振り返ります。

このバートのアイデアは、数年後、世界で最も安価で短時間でできる地雷撤去の方法にまで発展していました。そして、地雷探知で生命を守るアフリカオニネズミを訓練するための非営利組織「APOPO」を立ち上げました。訓練を終えたねずみは一匹で30分間に100mの走査ができます。それは一人の熟練探知者の一日の仕事量の2倍に当たります。発足以来、APOPOのネズミたちのお陰で、86万平方メートルの土地から地雷を摘出し、安全地滞に転換することができました。その地帯に暮らしていた住民580万人を地雷から守ることができたのです。2015年は歴史的な年でした。アフリカのモザンビークで地雷除去を完了し、政府は「地雷ゼロ」の声明を公に発表しました。 APOPOは現在、JICAの支援を受けてアンゴラでの除去を始めています。また、アフリカ大陸を超え、東南アジアでも活動を始めています。

モザンビークが2015年に、公に地雷ゼロを宣言した後、バートの人生に大きな分岐点が訪れました。APOPOの代表のポジションから退いて、禅の修行に本格的に集中することを決めました。Wellbeing Projectへの関わりを決めたのも、同時期です。このプロジェクトは、全てのチェンジメーカーに向けたもので、心の内面の安静をもたらすカルチャーを創造することを目指しています。

一人の人間としての成長と、社会的行動の関係を模索している間に、最近彼はフランスのアルデンヌ県のグランテールという地区で、 permaculture/wellbeing センターを発足するという新たな取り組みに乗り出しました。そこで彼は禅のワークショップと、個人を対象に人生を振り返るための個人指導に取り組んでいます。近年、生まれつつある特定の宗教や教義を超えた、人間の潜在的な力に焦点を当てるムーブメントの中心的な役割を担っています。